鬼脈は、江戸時代の宿場町を彷彿させる低い二階建ての木造建築が建て並ぶ街並みだった。

たくさんの看板や出店が出ており、縁日のような雰囲気がある。


禄輪さんが「巫寿、金魚すくいが出てるぞ」なんて言って私の気を紛らわそうとしてくれるけれど、それどころではなかった。

初めて見る妖、かむくらの社に来た妖狐たちや家鳴とは全く違う、おどろおどろしい姿の生き物。


小学生の頃にみた妖怪アニメの、ポップな色で可愛らしい顔をした妖なんてどこにもいない。



ほとんど禄輪さんの背中に顔を埋めるようにして歩いていた。


「巫寿、顔をあげなければ夏休みに帰ってくる時、帰り道が分からないことになるぞ。私が確実に迎えに行けるわけではないんだから」


そう言われて、そっと顔を上げる。

ぽんと私の頭を叩いた禄輪さんは、私の肩をだいて引き寄せると隣を歩かせた。