「恣冀(しき)、ごめんなさい。ごめんなさい……!」 心がそうしろと言った。無意識に口はそう動いていた。 罪悪感と後悔が胸を締め付ける。 そうだ、謝らなければならない。 彼があんな表情なのは、私のせいなのだから。 白髪の彼は、私をじっと見つめたまま動かない。 やがてゆっくりと梅の花を見上げた。 枝の隙間から木漏れ日がさして彼を照らす。 彼はまるで空気に溶け込むかのように、姿を消してしまった。