うっすら積もった雪に足跡を残しながら歩く。
不思議だ。雪は降っているのに寒くない。
傾きかけた強い日差しが雪に反射して輝く。
とても美しい景色だった。
「わ……」
社の正面に出た途端、むせかえるような濃厚な梅の花の香りが広がった。
社の正面を彩るように梅の木々が花開き、降り積もった白い雪に紅色の梅の花が映える。
一本の梅の木に歩み寄り、手を伸ばして枝を寄せる。
露を含んだ柔らかな花びらがつやつやと輝き、雪に現れた花は奥ゆかしくかぐわしい。
手折ってしまわないようにそうっと手を離すと、木は微かに揺れて戻る。
「……あ、れ?」
その葉の影に、白い人影が見えた気がした。