「……あの、ちゃんと食べるので、そんなに見られると食べずらい、です」

「禄輪から見届けろと仰せつかったため致しかねます」


小さくため息をついてスプーンを口に運ぶ。

身体の芯から温まる優しい味、少しだけ泣きそうになった。



「出発は逢魔が時の前にはとのことで、あと二時間ほどすればここを経ちます。準備を整えるようにと禄輪が」

「……はい」

「食事をしっかりとって、体力をつけるようにとも禄輪が」

「……わかりました」

「それまで、社の周りの梅を見ると良いでしょう。先代の審神者は季節の花を愛した人です。ちょうど社の正面の梅の木々が見頃です。少しはお気持ちの慰めになるかと」

「それも、禄輪さんが?」

「いいえ」



淡々とそう答えたトウダさん。

思わず顔を見る。


やはりまゆひとつ動かすことなく、私の様子をじっと見ている。


よく分からない人だ。