畳の上に寝転んで、両腕で顔を覆う。


両親は旅行中に事故で亡くなった、というのは半分が正解で半分は間違いだった。

あの日、たしかに私たち家族で車に乗って山を越えていたんだとか。



それは旅行のためでなく、空亡戦の激化で家を追われ安全な場所へ逃げるためだった。

けれどその途中、行先を空亡に阻まれて両親は私たちを置いて車を出て空亡と対峙したそう。


なぜ空亡は両親にそこまで執着したのか。

お母さんが私と同じ「鼓舞の明」を持っていたからだった。



必死にお母さんたちは戦って、お父さんはお母さんを庇って命を落とした。

そして、お母さんは私とお兄ちゃんを逃がすために命を落とした。


私のふくらはぎの傷は、お母さんが命をかけて私を胸に抱いて守ってくれた証なんだと言う。

もしそうでなければ、傷どころか髪の毛一本すら残らなかったという。


空亡という妖はそれほど強く、残忍で、恐ろしい化け物なのだ。