「────巫寿。とても大事な話をしよう」


禄輪さんが唐突にそう改まった。目を瞬かせると、彼は私に向き直る。


「巫寿がこれから暮らしていく上で、とても重要なことだ」


こくりと頷く。


「怖がらせるようで申し訳ないが、巫寿がこれから"普通"な生活を送るとしても、先日のように必ず妖に狙われるだろう。それは巫寿が持っている、二つ目の力が関係している」

「二つ目の力……? 言霊の力ではなくて?」

「ああ。稀に言霊の力以外に授力という力を持つ者がいる。去見《きょけん》の明、過去を見る。遠見《えんけん》の明、千里もの先を見る。書宿《しょしゅく》の明、書いた文字に力を宿す。……他にも沢山の授力があって、まだ我々が知らないものも数多くある」


去見、遠見、書宿、……。

聞きなれない言葉が並ぶ。


「巫寿は"先見の明"、未来を見通す力と、"鼓舞の明"、舞を舞う事で言霊を強くする力がある」

「先見と、鼓舞……」

「予知する力、増幅させる力とでも思ってくれ」


未来を予知する力、力を増幅させる力。

あまりにも現実味のない話に、困惑することしか出来なかった。