「卒業後は優秀だった二人は本庁で働くことになって、私は実家の社を継いだ。……あ、私も優秀だったから本庁から誘いは受けてたんだぞ。御祭神様《ごさいじんさま》に神主の職に選ばれたから、蹴っただけだ」
慌ててそう言い直した禄輪さん。
そんな姿に少しだけ笑ってしまう。
「えっと……本庁? 御祭神様、ていうのは」
「日本神社本庁。全ての"あやかし神社"を統括する組織だ。そのトップが審神者と言ってこの"かむくらの社"に仕えるんだ」
「じゃあ、いま審神者はいないんですか?」
「ああ、十二年前を最後にな」
十二年前、その数字を聞いて少し胸がざわめく。
お父さんとお母さんが亡くなったのも、丁度十二年前だった。
「御祭神様は、神社で祀っている神様の呼び方だ。多くの社の神主が、世襲制ではなく神託によって選ばれる」
神託……神様が神主を選ぶ?
どうやって神様が人を選ぶんだろう。それをどうやって私たちに伝えるの?
まだまだ理解しがたい事ばかりだ。
首をひねっていると禄輪さんに笑われてしまった。
「深く考える癖は一恍によく似ているな。難しく考えずそういうものだ、と思っとけばいい」