外は雪が降っていた。

けれど思いのほか寒くなくて、そのまま歩き続ける。

葉が落ちて裸になった木に、ふんわりと雪が積もり白い花が咲いているようだった。

月明かりが眩しい。



森の奥へは入る勇気が無くて、社のそばを歩いていると遠くから雅な笛の音色が聞こえた気がした。

子守唄のように優しい音色、羽衣で頬を撫でられているようだった。



導かれるようにその音色を辿る。

その音色は本殿の裏、注連縄に紙垂の巻かれた大きな木の上からだった。



鮮やかな紫色の袴が不思議な旋律と共に揺れている。


しばらく根元でその音色に耳を傾ける。

線香花火が落ちるように音が止むと、「巫寿」と名を呼ばれた。


月明かりに目を細めながら見上げる。

禄輪さんが私に手を差し出していた。




その手を掴むと、



「きゃっ」


禄輪さんは何事もないようにふわりと私を引き上げて木の上に乗せた。