略拝詞と書かれた二行目に達筆な文字で不思議な言葉の羅列が書かれていた。
「祓えたまえ、清めたまえ、神ながら守りたまえ、幸えたまえ……?」
「そうだ。祓い清めの祝詞の中で一番短く、神職が最もよく使う祝詞だ」
ミミズみたいなヒョロヒョロしたした文字を指でなぞる。
祓えたまえ
清めたまえ
神ながら守りたまえ
幸えたまえ
二行目まではアニメや漫画なんかで見たり聞いたことがある。
邪気を祓って下さい、穢れた心身を清めて下さい、御守り下さい、幸せにお導き下さい。
そんな意味があると禄輪さんは言った。
「私もこれからは巫寿を気にかけるようにするし、騰蛇《トウダ》を傍に遣わせよう。けれども、どうしても誰もいない時に怖い目に合いそうになったら、この略拝詞を唱えなさい。他の祝詞のように強力な力はないが、逃げる時間は稼いでくれる。その間に俺や騰蛇が駆けつけよう」
それはつまり、私はひとりであんな化け物とまた対峙しなければならないということだ。
きゅっと唇を結んで紙をそっとテーブルの上に戻すと、禄輪さんは困ったように笑う。
「首から下げれるように、巾着に入れてあげよう。……騰蛇《トウダ》、可愛らしい布を選んで繕ってやってくれ」
「承知しました」
禄輪さんは立ち上がる。
私の横を通り過ぎる際に励ますようにぽんと頭に手を乗せた。