その視線から逃げるようにテーブルの木目に視線を落とした。
────そんなの。
そんなの、私にはできるわけが無い。
だって、自分の中に特別な力があることも数日前に知ったばかりだ。
先日の一件だって、恐ろしい化け物を前にして足がすくんで何も出来なかった。
両親やお兄ちゃんに知らないところで守ってもらっていたことさえ知らなかった。
これからどうすればいいのかも分からない。
そんな私に何ができるの……?
「巫寿、顔を上げなさい」
そう言われてそっと上をむく。
禄輪さんはふっと微笑んだ。
「巫寿の言葉には、命が宿っている。巫寿が心から願ったことを口にすれば、それはその通りになる。だから、自分を否定してはいけない。「できない」と言えば出来なくなる。「怖い」と言えば恐怖に支配されてしまう。"言祝ぎ"を強めなさい」