「家に帰ればこれまで通り……とはいかないが、学校に通って友達と遊んで、普通の生活は送れるだろう」
確かにお兄ちゃんがいないことで、これまで通りとは行かないかもしれないけれど、またあの家でも暮らせるし、学校にも通えるんだ。
良かった、と安心すると同時に妙に胸に何かが引っかかる感覚を覚えた。
さて、と禄輪さんが一呼吸おいた。
「ここから話すことは、"私たち"の話だ。今回の一件でこちら側を知った巫寿は、もちろん知る権利がある。それにこれからの事を考えると、自分で自分の身を守るためにも、知っておくべきこともあるだろう」
自分で自分の身を守るため。
それを聞いて、「普通の生活には戻れない」というのがそういう意味であることを察した。
「でも、私はこれまで、妖に襲われることなんてなかったのに」
「それは祝寿や両親が、巫寿の知らないところで守ってくれていたからだ。けれど一恍や泉寿はもういない、祝寿にも守ってもらえない。自分で自分を守るしかないんだ」
禄輪さんが私を真っ直ぐに見据えてそう言った。