目元でイェイとピースサインをした薫先生。
「薫先生のお兄さんだったんですね」
「そうそう。で、どんな話したの?」
「特には……学校楽しい?とは聞かれましたけど」
そっかそっか、と薫先生はにこやかに頷く。
すると「巫寿」と人差し指で手招きして、私に耳を寄せるよう促す。
不思議に思いながらも近寄った。
「芽のこと、他のみんなには黙っといてもらっていい? 激しめの喧嘩中だからあれこれ詮索されたくないんだよね」
思わずプッと吹き出した。
激しめの喧嘩って。
分かりました、と頷けば薫先生は安心したように息を吐いた。
「じゃ、気をつけて。また夏期補習の時にね」
「はい、さようなら」
手を振る先生たちに一つ頭を下げて車に乗り込めば、御神馬がブルブルと鳴き声を上げてゆっくり走り出す。
小さくなっていく鳥居を見つめながら、また戻ってくる日のことを思って胸を躍らせた。