ん? と首を傾げて私を見下ろす薫先生に、誰かの顔が重なる。
言いかけていた言葉が出てこず、その顔を凝視した。
「どしたの巫寿。そんなにまじまじ見られたら照れちゃうんだけど、あはは」
そう言って目を細めた瞬間、ピッタリと重なった気がして「あ」と声を上げる。
「薫先生、兄弟いますよね?」
キン、と薫先生の纏う空気が張り詰めた気がした。
悪いことはしていないはずなのに、まるで喉にナイフを突きつけられているような雰囲気に息が止まる。
「……どうしてそう思った?」
声色は優しいはずなのに、背筋が凍るほどの冷たさを感じる。
ばくばくと心臓が激しく鼓動する。
「……この前、ゴールデンウィークの最後の日に、街の中で見かけて。薫先生に似た人に声をかけられて。眼帯をつけた」
震える声で必死に伝えれば、薫先生は僅かに目を見開いた。
薫先生はふっと鋭い雰囲気を収めると、先程とは正反対に気の抜けた顔で笑う。
思わずほっと息を吐いた。
「なるほどね。巫寿は芽に会ったんだね」
「め、ぐむ?」
「俺の双子の兄貴だよ、そっくりでしょ」