お兄ちゃんが倒れ、妖に襲われ、自分の出自を知り自分の力を知った。

そしてこの学校へ来て、嘉正くん、来光くん、慶賀くん、泰紀くん、たくさんの友達にも恵まれた。

はじめはただ、お母さんたちのことを知りたくて、自分の中に宿っている力のことを知りたくて、この学校へ進んだ。

けれど今は違う。


誰かに守ってもらうだけじゃない。私を大切に思ってくれている人たちを守りたい。

その人たちを守れるだけの強さが欲しい。

強くなりたい。


そのためにこの学校で学びたい。

そう強く思うようになったんだ。


「あの、禄輪さん」

「ん?」

「夏休み間、もし、時間があったら……稽古、つけてください。私にも」


禄輪さんは目を瞬かせたあと「もちろんだ」と深く頷いて私の肩を強く叩いた。

ありがとうございます、そう笑ってひとつ頭を下げる。


今度は薫先生に向き直った。