社頭から鳥居へ繋がる階段をかけ下りる。

十段ほど降りたところで、景色が後ろへ流れるように過ぎ去っていき、気がつけば鳥居の下に立っていた。


「巫寿! もうすぐ出るって!」


鳥居の前には真っ白い毛並みの御神馬に軛を付けた車が止まっている。

その前で嘉正くんたち薫先生、禄輪さんが手を振って立っていた。


みんなに小走りで駆け寄った。


「危なかったな巫寿! これ乗遅れたら、次は明日の便になっちゃう所だったぜ!」

「間に合ってよかった、ちょっとバタバタしてて」

「早く乗り込もうぜ」

「あ、先に行ってて。先生たちに挨拶してくる」


分かった、と頷いたみんなは先に車に乗り込んだ。

禄輪さんに駆け寄った。

禄輪さんは目を弓なりに細めて私を見下ろした。


「忘れ物はないか?」

「はい。それに、すぐ戻ってくるし」


そう肩を竦めれば「確かにな」と禄輪さんは苦笑いを浮かべた。


「私は暫く神修に残ることになりそうだ。鬼脈から一人で帰れるか?」

「はい、大丈夫です。もう覚えたんで」


禄輪さんは少し目を見開いて、すぐにとても優しい顔をして私の頭をぽんと叩いた。


「この数ヶ月で見違えたな」


四月の私を思い出す。禄輪さんの陰に隠れてびくびくしていたあの頃の私。

この数ヶ月で、本当に色んなことがあった。