目を瞬かせた禄輪さん。ふっと表情をやわらげる。


「優しい子だな。神職は対処も知っているし慣れている。さして問題は無い」


良かった、と息を吐く。

一度あっただけの人とは言え、私のために危険をおかしていると知ったらいてもたってもいられない。


「帰れるようになったら、私が送ろう。この社は少しややこしいところにあるからな」

「あの、ここって……どこなんですか?」

「かむくらの社という場所だ。今は社の神職が不在で住まいの方は最低限の手入れしかされていないが、社は立派だったろう? 全国の神職たちの頭が御座す社だ。非常に重要な場所だから、何重にも言霊をかけて鎮守の森の中に隠されている」


言霊で隠す。

禄輪さんはさらりとそう言ったけれど、言霊の力でそんなこともできるんだと目を見開く。


「家に帰れば、祝寿の見舞いも直ぐ行けるだろう。それまでは私がこまめに様子を見てくる。安心しなさい、今朝は変わりなかった」



そう聞いて嬉しいのか悲しいのか複雑な気持ちだった。

変わりないということは、まだ眠ったままということだ。




お兄ちゃんのことを気にかけていてくれたことに、ありがとうございますと頭を下げる。