それから一度自室に戻って、必要な荷物を纏め直した。
またすぐに帰ってくると思うと、ボストンバッグ一個分の荷物量になった。
忘れ物はないかとタンスや引き出しを開け閉めして、三角形に折られた薬包紙を見つける。
「あ、これ。思い出し薬」
開門祭の前に、部活動見学をした際に漢方学部で作った漢方薬だ。
一緒に貰った効能が書かれた紙には、期限が今日までだと書かれている。
「捨てるのは勿体ないし……飲んでみる?」
鞄の中に入れていたミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。
薬包紙の口をちぎってさらさらと口に流し込む。
口の中に広がる苦味に顔を顰めながら、水で一気に流し込んだその瞬間。
まるで走馬灯のように、頭の中をたくさんの景色が過ぎ去った。