「やっほー、皆。片付け進んでる?」
ひょこっと顔をのぞかせたその人に、私たちは「あっ」と声を上げた。
「薫《くゆる》先生!」
ひらひらと手を振りながら病室へ入ってきた薫先生は、よっこらしょと私のベッドに座った。
「薫先生、どうしたの? 終業祭、終わったんでしょ?」
カバンに荷物を詰め込みながら、慶賀くんが不思議そうに尋ねる。
「そそ、終業祭が終わったからさ、お楽しみのアレ持ってきたよん」
懐からしゅっと取り出して私たちの前に掲げた長方形の紙に、皆が「うげっ」と声を揃えた。
通知表、と書かれたその紙をぴらぴらと揺らしながら薫先生は「ひひ」といたずらに笑った。
「はい、名前順に取りに来るように!」
ひとりひとりの名前を呼び始めた薫先生に、皆は肩を落としながら歩み寄る。
はい巫寿、と差し出された通知表を受け取って恐る恐る開けた。
「げ」
みんなして顔を顰めれば、薫先生は楽しそうにケラケラと笑う。
見事に「1」と「2」がならぶ通知表は、過去に見た事がないほど最悪の成績だった。
でもこればっかりは仕方がない。
だって私たちは、ひと月あまり眠り続けていたんだから────。