「────さて、まだ話していないことが山ほどあるな。とりあえず巫寿のこれからの話をしよう」
食後のお茶を持ってきてくれたトウダさんが禄輪さんのそばに座ったタイミングで、そう口を開いた。
「まず家についてだが、 魑魅の残穢が残っているからあと数週間は戻れない。昨日会った神主が清めてくれているからそれが終われば帰れるだろう」
「あの、その残穢って言うのは……」
一度聞いたので何度も尋ねるのは申し訳ないと思いつつ聞き返す。
「今回の魑魅という妖は、"瘴気"と呼ばれる生き物に害を与える目には見えない気を放っているんだ。もっと簡単に言えば悪い空気だな。そういう、妖が残していく悪いものを総じて"残穢"と呼ぶ。残穢はそのままにしておくとカビのように根付いて大きくなる。だから、祓って清める必要があるんだ」
「それは、どんな害があるんですか……?」
「怖がらせてしまうから、あんまり言いたくないんだが……。そうだな、妖には正気を狂わせたり凶暴化させる作用があるし、人間にも病気を引き起こしたり最悪死に至ることもある」
死、と聞いてさあっと血の気が引いた。
それみろ、と禄輪さんが苦笑いする。
「あの神主は昔からよく知ってる奴だから、ちゃんと払ってくれる。だから安心しなさい」
「あの神主さんは大丈夫なんですか……?」