「うわっ、これ誰の!? 腐ったバナナ出てきたんだけど!」
「あ、それ俺の! お見舞いで貰って取って置いたやつ、そんな所にあったんだ〜」
「引き出しにしまう馬鹿がいるか!」
「なあ俺のパンツしらね? 何処にしまったっけ」
「このいちご柄のパンツ誰の?」
今朝から病室のベッドの上は賑やかな声で溢れていた。
カチャ、と病室の扉が開いて白衣の男の人が顔をのぞかせた。
「皆さん、退院の準備は進んでますか? 次の車が最終ですから、乗り遅れないでくださいよ」
「陶護《とうご》先生、俺の靴下片っぽ見つからない〜」
情けない声でそう助けを求める慶賀くんに、陶護先生はやれやれと肩を竦めた。
ここは学舎の中にある医務室の隣にある、処置室も兼ねた病室だ。
私たちは約二ヶ月近くそろってここに入院していて、今日は念願の退院の日。
そして怒涛の一学期が終わった日だ。