そうしたら……どうなる?

きっと大丈夫だ。薫先生や禄輪さんが駆けつけてくれるに違いない。

社頭には沢山の神職さまがいる。誰かがこの事態をおさめてくれるはずだ。


でも、それが間に合わなければ……?


また誰かが犠牲になる。

もしかしたら私のように誰かの大切な人が傷付くかもしれない。誰かは大切な人を失って、心に深い傷を負うかもしれない。

お父さんとお母さんを失って、お兄ちゃんまで失いかけた。


私はその苦しみや悲しみを、誰よりも知っているはずだ。


何よりも私はこれ以上、大切な人を失いたくない。




守りたい。強くなりたい。

大切な人たちを守れるだけの強さが欲しい。

変わりたい。成長したい。

守ってもらってばかりの自分から、大切な人たちを守れるだけの強い人間に。



渾身の力を振り絞って、震える指で柏手を打った。



「掛けまくも畏き 学起(まねき)神社(じんじゃ)の大前を (おろが)(まつ)りて (かしこ)(かしこ)みも(もう)さく……ッ!」


動けないなら精一杯手を伸ばせ。


大神等(おおかみたち)の広き厚き……ッ、御恵(みめぐみ)(かたじけな)み奉り (たか)(とうと)神教(みおしえ)のまにまに 天皇(すめらみこと)を仰ぎ奉り────」


祝詞の効果が効かないなら、知っている祝詞を叫び続けろ。

響け、届け。