怒りに満ち溢れたその怒号が、どうしてか胸に突き刺さる。

まるで今にも泣き出しそうなのを隠して、叫んでいるように聞こえたからだ。


「方賢さん……ッ!」


その瞬間、パン!とまた御札が弾け飛ぶ音がして、上から叩き潰されるような圧力がかかった。



「……く、ああッ!」


方賢さんの悲鳴が聞こえたかと思えば、抗うことも出来ず床に叩きつけられた。

まるで岩の下敷きにでもなったかのように指ひとつ動かせない。



目だけで鳥居を確認すれば、残された札は1枚になっていた。

方賢さんは床に倒れている。まるで蛆虫が集るかのように倒れた方賢さんの周りに瘴気が渦巻いた。

かろうじて見えたその指先はどす黒く染まり、ぴくりとも動かない。


身体中を駆け巡る不快な感覚に目尻から涙がこぼれた。

息が出来ない、苦しい。全身に針を刺されているようだ。目が回る、気持ち悪い。

視界が徐々に狭まっていく。気が遠くなる。

もう駄目だ、一歩も動けない。


皆が繋いでくれた道なのに、私はまた何も出来ず終わってしまうんだ。

私が倒れれば、この後どうなってしまうんだろう。


この瘴気が溢れ出して学者も社頭も包み込まれて、奥に封印されていた空亡の残穢が表へ出てきてしまうんだ。