「あ、れ……?」
なにも変わらない目の前の景色に、戸惑い気味にそう呟いた。
瘴気は変わらずにごうごうと音を立てて溢れ出し、充満する空気はピリピリと肌を指す。
「なんで……!」
その瞬間、パン!と何かが弾ける音がして身体中に強い圧力がかかった。
経っていられなくなって、その場に膝をついた。
目の前が回ってジェットコースターが落ちる時のように内臓がふわりと浮かぶ感覚がする。
誰かが肩にのしかかっているみたいだ、うまく立ち上がることができない。
う、と誰かのうめき声がして震えながら顔を上げる。みんなが床に倒れ込んでいるのが見えた。
結界の御札が、また破れたんだ。
轟音が響き渡り、瘴気は決壊したダムから流れ出る水のように吹き出した。
「ああ、素晴らしい……ッ! もう少し、あと少しで封印が解ける!」
恍惚とした表情で方賢さんは諸手を広げた。
どうして?
祝詞は一言一句間違いなく奏上した。
前はこの祝詞を唱えれば、全ての瘴気を払うことが出来たはずなのに。