神話舞の最終確認で打ち合わせをした時に、台本に書き込むために使ったのをポッケに入れたままにしていた。
「ボールペンでも大丈夫?」
「書ければ何でも大丈夫、ありがとう巫寿ちゃん」
よし、と嘉正くんがひとつ頷く。
「巫寿は瘴気を祓ってほしい。あの鳥居の封印、方賢さんが呪詞を奏上しなくても、もうすぐ破れるかもしれない」
険しい顔で鳥居を見上げそう言う。
鳥居に残された御札はあと十枚くらい。溢れる瘴気に煽られて、音を立ててバタバタと音を立てている。
何もしなくても、瘴気の勢いだけで破れてしまいそうだった。
自分ひとりで出来るかどうかは不安だったけれど、私がやらなければいけないんだと自分奮い立たせた。
わかった、とひとつ頷いた。
「一斉に飛び出して一気に片をつけるよ」
みんなの顔つきが変わる。
さん、に────いちの瞬間、皆は強く床を蹴って柱の影から飛び出した。