「空亡の残穢を取り込んで、私は力を得るんです。そして、誰も私を蔑まない強さを手に入れる。私は特別になる……ッ!」


拳を握り高らかに笑うその横顔にかける言葉が出てこなかった。


はじめは勤勉で努力家で真っ直ぐな少年だった。けれど努力も孤独も報われず、その結果道を誤ってしまった。

そしてそうなってしまった原因に、私たちがいたなんて。



「方賢さ、ん……ッ! あんた間違ってる、そんなんで強くなったって!」

「うるさい、黙れ! そんな風に私を呼ぶなッ!」


泰紀くんの言葉を遮って方賢さんが吠えるように叫んだ。

顔の前で蜜柑を握りつぶすように腕に力をいれれば、泰紀くんを抑えていた形代が彼の頭を押さえつけて捻り潰そうと動いた。

次の瞬間、私の悲鳴は突然の爆発音でかき消された。


背中にのしかかっていた形代の重みが消えて、ハッと振り返れば形代が頭から燃えている。


「巫寿!」


慶賀くんだ。差し出された手を握って立ち上がる。

引っ張られるままに走り柱の影に滑り込めば、私の肩を引っ張った嘉正くんによって壁側へ追いやられる。

続々とみんなが滑り込んできて、形代はボンッと音を立てて燃え尽きた。