そんな時に、彼と出会った。


「ねえ、君。優秀な者が上に立てない今の本庁の在り方をどう思う?」

「あ、貴方は……?」

「ねえ、どう思う?」


彼は言った。今の本庁は腐敗している、と。

昔の在り方に固執するあまり、優秀な神職が芽を出せず潰されてしまっている、と。

貴方は特別だ、貴方は優秀だ。力さえ手に入れれば貴方は上に立てる人間だ。


「だから貴方は、力を手に入れなさい」


全国各地の社に厳重に保管されている「空亡の残穢」のひとつは、神修の学舎内、旧校舎の奥に隠されている。それを探しなさい。

それを手にした貴方は、特別だ。


そうか、力さえあれば……。

私に強い力さえあれば、私は特別になれる。私は上に立てる。


次の昇級試験で他の奴らよりも上へいける。来年の神話舞にも選ばれる。

ホコリとかび臭い文殿から出られて、紫に白紋の入った袴を着て社頭を歩ける。


そうか、力さえあれば!