勉強だって好きでは無いし、神職の勤めは辛いことも多い。
けれどいつかは必ず上へ上がれる時がくる。
そう思って耐え忍んできた。
なのに。
「草薙翔五、まねきの社禰宜に任ずる。推薦者、日本神社本庁本部長蓬莱栄」
私を押しのけ、先へ行く。
私よりも劣っているはずのもの達が、私を押しのけ先へゆく。
なぜ、なぜ、なぜ────?
私の家系が社を管轄していないから、私が編入生だから、だれも私の力を理解していないから?
「宮司、方賢が思い悩んでいるようです。なぜ彼は昇格できないのでしょうか」
「……ああ。あれは仕方がないんです。彼自身が保有する力がそこまで大きくない。三級より上がることは難しいでしょう。それに彼は────」
ああ、そうか。そうだったのか。
私は特別ではなかったのか。特別なのは私の周りにいるもの達だったのか。
自分の力に自惚れて過信していたのは、私だったのか。
なんて情けない。
なんて惨めな。
瑞雲宮司、禄輪禰宜、喧鵲禰宜頭、景福巫女頭、方賢さん。
方賢"さん"。
なぜ私に役職名を付けない?
権禰宜ですら私には不釣り合いだというのか?
皆、私を、無力だと蔑んでいるのか?