「この子は神様のお使いだ」
青年がそう言ったことで、方賢の奇跡は瞬く間に村中に知れ渡った。
初めは疑心暗鬼だった一部の大人たちも、方賢の奇跡を何度も見ているうちに「神童」だと騒いだ。
怪我も病気もひとたび方賢が祈れば、たちまち良くなった。
「ほら、方賢ちゃんが笑っとる」
「ああ、縁起がよろしいね」
「うちの主人も、こないだ治してもろたばっかりで」
小さい頃はあまり自覚していなかった方賢も、小学校へ入った頃には自分の持つ力が特別で、ほかとは違っていることに気が付いた。
街を歩けば大人たちから褒められ、色んなものを貰った。
笑えば褒められ手を振れば感謝され、大人たちに頼られることが誇らしく、皆から大切にされることに心地よさを感じていた。
神童、神のお使い、と大切にされて育った方賢は優秀な成績で小学校を卒業すると、山の麓の私立の中学へ進学した。
同級生は村の中学へ進学し、知り合いはいないもののまたすぐに皆と打ち解けられると思っていた。
しかし────。