山の中腹にある人口数百人ほどの村落で生まれたその少年は、幼少期からその稀有な力から「神童」と呼ばれていた。


(にのまえ)さん、どうもこんにちは」

「あらあら、山田さんのおばあちゃん。どうかされました?」

「ちょっと膝が痛ぁて。方賢ちゃんにさすって貰いたくって」

「あらまあ大変。庭から回って縁側座っといてください。もうちょっとで小学校から帰ってくると思いますから」

「助かるわぁ、寄せてもらうな」


よいしょ、と縁側に腰掛けた老婆は痛む膝をそっと撫でる。

しばらくすると塀の外を走る軽やかな足音が聞こえて、玄関から「お母さんただいま」と高い声が聞こえた。

転がるように廊下を走る音が近づいてきて、「あれ?」と曲がり角から顔をのぞかせた。


「山田のおばあちゃん、こんにちは」


縁側に座る来客を見て、少年は少し恥ずかしそうにはにかんだ。


「方賢ちゃん、おかえり。寄せてもらってるで」

「どうしたの? おばあちゃんに用事?」

「ううん、方賢ちゃんにな。膝が痛ぁてさすって貰いたいんよ。またお願いしてもええかな」