「方賢"さん"方賢さん方賢さん! 貴方がたはまるで馬鹿の一つ覚えのように私をそう呼ぶッ」


言葉の意味がわからず、髪を引っ張られる痛みと困惑で顔を顰めながら方賢さんを見た。


「馬鹿にしているんですか? 私がこの歳になってもまだ正階三級であること、権禰宜であること、社でのお勤めも許されず文殿に追いやられていることをっ!」


本当になんの話しをしているのかが分からなかった。

今までに見たことの無い怒りに震える方賢さんに言葉を失う。


「なぜ私のことを、誰も「権禰宜」とは呼ばないのですか? 私が自分たちよりも下であると思っているからですか!」


権禰宜……?

自分たちよりも下?


方賢さんは何を言ってるの?


「力がなければ役立たず────どれだけ時代が移ろうとも変わらないこの界隈の考え方には反吐が出そうです」


吐き捨てるようにそういった方賢さんの瞳は怒りの炎で燃えている。

なのに何故か、その目が今にも泣き出しそうに思えた。