「ここを護るその御札は、破れば呪者に呪いが跳ね返るようになっているんですよ。初めはどうにもならなくて苦戦していたのですが、この御札を頂いてからはすべて呪いがこちらに流れてくれたので、私が呪いを被ることもなく破壊することが出来たんです。なので、貴方には感謝しているんですよ、来光くん」


来光くんは泣きそうな顔をして歯を食いしばった。


「僕はっ……僕は方賢さんを助けたくてその御札を渡したんだッ!」

「ええ、大いに私を助けてくれましたよ。貴方の思惑とは違ったでしょうけれど」


ふふ、といつも文殿で見せるような笑みを浮かべた方賢さん。

けれど今はその笑顔の奥の冷たさが手に取るように分かった。


「さて。立て続けに呪詞を唱えたのでだいぶ(しゅ)が削られてしまったようですね。少しこちらの作業は休みましょうか。その間に貴方がたをどうするか考えましょう」


御札を袂に仕舞いながら、方賢さんは私の頭のそばに歩み寄った。