「方賢、さん……? 何を」
「申し訳ありませんが、ちょっと黙っていてください」
懐から帛紗を取り出した方賢さんは半紙を人の形に切り取った形代を取り出した。
ふっと息を吹きかけた次の瞬間、ぶわりと大きくなって私たちに向かってくる。
「っ!」
避ける間も無く目の前に迫ってきたそれは、私たちを押し倒すと床に縫い付けるように覆いかぶさった。
「何すんだよ方賢さん! なんで、なんでこんなこと!」
「意味わかんねえよ、説明しろよ!」
そう叫んだ二人を、冷たい目で一瞥する。その瞬間、二人に覆いかぶさる形代が彼ら頭を強く床に押し付けた。鈍い音がして二人の悲鳴が聞こえた。
喉が震えて、吐く息ですら情けないほどに細い。
私たちに背を向けた方賢さんは一番手前の鳥居に手をかけた。その先には色褪せて角が千切れかけた御札がある。
そこでさっきここへきた時の違和感がわかった。御札の数が明らかに減っている。
朱色の柱が見えないほど貼り付けられていたはずの御札がほとんど剥がされていて、鋭いナイフで切り刻まれたような紙切れが足元に積もっている。
誰かに切り裂かれたのは一目瞭然だった。