方賢さんはすっと目を細めて私たちを見据える。その視線がずっと感じていた胸騒ぎの嫌な感じと重なった。


「空亡の残穢の封印場所はその保管先の禰宜以上の神職と、神社本庁の上層部しか知らないはずです」


ゴールデンウィークの何日目だったか、薫先生が空亡の残穢を回収しに沖縄へ行って、神修に帰ってきた時に私たちへ教えてくれたことだ。

残穢を一箇所に集めず全国各地の社に保管していて保管されているということは社の禰宜以上の神職と神社本庁の上層部しか知らない、そう言っていた。

空亡の残穢はそれほど厳重に扱われていいるということだ。


それをなぜ、方賢さんが知っているの? だって方賢さんは権禰宜、禰宜の一つ下の階級だ。その情報を知っているはずがないのに。


「権禰宜のあなたが知っているはずのない情報だ」


心臓がバクバクとうるさい。耳の横にあるみたいだ。

方賢さんはじっと私たちを見つめる。その細い目を初めて怖いと思った。



「────邪魔な人達ですね」



全身がぞわりと震えた。