嘉正くんがガラリと扉を開けた瞬間、むせかえるほどの瘴気が流れ込んできた。
思わず咳き込めば、他のみんなも顔を顰めて口元を押さえる。まるで台風の中を歩いているかのように強い圧迫感が前から押し寄せる。
尻餅をつきそうになった私の腕を咄嗟に慶賀くんと泰紀くんが掴んで支えてくれた。
「あ、ありがとう……!」
「気をつけろ巫寿。にしてもなんだこれ、前よりひどくなってないか? 俺でもひっくり返りそうだ」
一歩一歩踏み締めながら扉をくぐる。
目の前に夥しいほどの鳥居が現れた。その鳥居に違和感を感じたけれど、その鳥居の下に立つ人物を見て違和感などどこかへ吹っ飛ぶ。
鳥居の奥から溢れ出る瘴気がその浅葱色の袴をはためかせる。骨張ったほっそりとした背中に叫んだ。
「方賢さん……っ!」
ふらりと振り返ると、そのおぼろな目と目があった。
「巫寿さん?」
「助けに来ました! 早く、こっちにっ」
ゴオオ、とまるでダムの水が流れ出すかのように激しい音が響く。間違いなく瘴気が鳥居の奥から溢れ出す音だった。
く、と歯を食いしばって両腕で顔を覆う。
一瞬でも力を抜けば、吹き飛ばされそうだった。
息をする度に目が回って、身体中を不快な何かが這い回る。刺すように肺が痛い。