走りながら、自分の中の中心を捉えるように意識を集中した。
眞奉、聞こえる?
声には出さずに胸の中でそう問いかける。
そう間を空けずに、「はい」と頭の中に声が響いた。
禄輪さんは今どこにいる?
鬼脈に。
そうだ、禄輪さんもたしか今朝の開門の儀には出席していなかった。
鬼脈ということは、電話やメッセージを送っても届かない。
禄輪さんにこのことを知らせに行って欲しい、とまた心の中で伝えれば、すぐに「致しかねます」と返事が帰ってきた。
眞奉、と彼女を窘めるように呼べば、再度「今、君から離れることは出来ません」と声が響く。
薫先生が連絡に気付いてくれなかったら、私たち皆危ない目に会うかもしれないの。だから現状を禄輪さんに伝えて。
君が危険な目に晒される可能性のある状況で、私がこの場を離れるとお思いですか。
淡々とした返事に言葉が詰まる。