「急にどうしたの? 方賢さんはたった今トイレに行ったばかりだよ」

「それに僕の形代もちゃんと嬉々先生を見張ってる。今も学舎の────」

「研究室にいるんだよね!」


え、と目を見開いた来光くん。

なんで知ってるの?とでも言うように驚いた顔で私をみあげる。


それもこれも、あの夢の通りだ。



じゃあ今すぐ助けに行かないと方賢さんが危な────駄目だ。

助けには行けない。



もしも全部あの夢がその通りだったとしたら?

そうすれば、あの場へ行った皆はまた倒れてしまう。


逃げろ、と私に腕をさし伸ばす嘉正くんの顔が脳裏を過った。

苦痛に歪んだ顔で口から血を流した嘉正くん。


私は何も出来なかった。



じゃあどうすればいいの?

このままだったら方賢さんが危ない目に会うかもしれない。


何も分からない私に丁寧に文字の読み方を教えてくれた。おすすめの本を探してくれて、話を聞いてくれた。