転がり込むように文殿に入れば、いつも方賢さんが座っている席にその姿はなかった。
本棚の間を確認しながら駆け抜けると漢方薬学の棚に嘉正くんたちの姿があった。
「あれ巫寿? どうしたのそんなに慌てて」
「神話舞終わったのかー?」
きっと屋台で買ったんだろういかの串焼きを齧りながら、首を傾げた。
「……っ、方賢さんは!?」
「あれ、すれ違ってない? 丁度巫寿と入れ替わりでトイレ行ったよ」
「真面目に片付ければ最終日は遊んでいいってさ〜! さすが方賢さんだよな!」
みなさん、私はちょっと御手洗に。逃げ出さずに取り組めば最終日くらい遊べるように計らってあげますから、真面目に取り組むんですよ
あの夢の中で方賢さんはそう言った。
あの夢が未来で、あの鳥居の奥にいたのが嬉々先生なのだとしたら。
「方賢さんが危ない……っ! 早く、早く助けないと」
「巫寿?」
嘉正くんが心配そうに私の顔を覗きこむ。