その中に、恵衣くんの姿を見つけた。黒いスーツの中で松葉色の制服はよく目立つ。
「恵衣くんはどうしてあっちに並んでるの?」
「両親が本庁の役員だからだよ。ほら、恵衣の隣に立ってる人」
背伸びをして前の人の影からのぞく。
涼し気な切れ目がそっくりな男性と、雰囲気がどことなく似ている女性が両隣に立っていた。
「あっ、ねえ皆! あそこ!」
なにかに気がついた来光くんが小声で何かを指さした。
列の隅にひっそりと並ぶ嬉々先生の姿が見えた。
顔は相変わらず長い前髪で見えないけれど、白衣の襟元や袖から見える首や足に肌が見えないほど巻き付けられた包帯がちらりと見えた。
それに気付いたみんなが、ハッと息を飲むのが聞こえた。
嘉正くんは険しい顔できつく拳を握った。
「……作戦通り、この後嬉々先生に来光の形代をつかせる。俺らは交代で方賢さんを見守るよ。巫寿は夜まで神話舞に集中して。何かあったら知らせるから」
うん、とひとつ頷く。
得体の知らない何かが迫ってくるような言い表せない胸騒ぎがした。



