「待って待って! 行ってきますのおまじないもしてないだろ!」
「もー、急いでるの。それに、子供じゃないんだから!」
「15は十分子供だ馬鹿!」
追いかけてくるお兄ちゃんの手から逃げるように小走りで玄関へ向かう。
ちょうどその時、プシューっとヤカンが音を立てるのがキッチンから聞こえた。お兄ちゃんが「ああっ」と悲鳴をあげてまたドタバタと戻っていく。
その隙にスニーカーのつま先をトンと叩きつけてドアを開けた。
鼻先には真っ白な景色が広がった。どこもかしこも粉のような雪をふわりと被っている。ツンと肌を刺す冷たい空気に、吐く息が染った。
「いってきまーす!」
「あっこら巫寿!」とお兄ちゃんの怒った声が聞こえて、慌ててドアを閉めた。