臍の上あたりで結んだ紐が蝶蝶結びがひらりと揺れる。その結び目の上からは白い縄上の紐がちらりと見えるのが可愛らしい。

髪飾りには丈長(たけなが)と呼ばれる銀の紙を雛菊の形に折ったものと、熨斗(のし)を身につけている。

これが思ったよりもしっかりした作りで、首が動かしにくい。


「似合ってるぜ!」


そう笑った瑞祥さんの頭の上には紫陽花の花の巫女簪がしゃなりと揺れる。

本巫女役の瑞祥さんは神話舞の中でも巫女舞を踊るので、巫女簪に千早(ちはや)と呼ばれる羽織を身につけた本物の巫女さながらの出で立ちだった。


「瑞祥さんこそ、とっても綺麗です……!」

「がははっ、そうだろうそうだろう!」


腕を組んで満足げに頷く瑞祥の背後から、ひょこっと顔を出したのは聖仁さんだった。


「本物の美人はガハガハ笑ったりしないけどね」

「わあっ、聖仁さん素敵です!」

「ありがとう。巫寿ちゃんもよく似合ってて可愛いよ」


白と薄紫色の水干に、黄緑色の薄い布を頭から被った姿は、まさに「源氏物語」の光源氏が蘇ったように儚くて美しい。

御祭神である須賀真八司尊(すがざねやつかのみこと)にお仕えする少年神、
萬知鳴徳尊(ばんちめいとくのみこと)は美少年の姿でよく書かれているから、やっぱり聖仁さんにぴったりの役どころだ。