みんなで団結したあの日から、報告会がてら夕飯後に寮の横の池のほとりに集まっているけれど、何かが起きることも無く着々と日は過ぎて行った。

相変わらず方賢さんは呪いの被害を受けているけれど、私の出番が来ることも無く、来光くんが用意した厄除けの御札がかなり効果を発揮しているようだった。


このまま何も無いといいけど、と不安げに呟いた来光くんに「つまんねぇ」と唇をとがらせた慶賀くん。

もれなく嘉正くんに頭を叩かれたのは言うまでもない。


そうこうしている間に、開門祭まであと数日になった。

今日の昼休み練習は、神楽殿でまねきの社の神職たちと合同で練習したあと、衣装合わせになった。

鏡の向こうに映る鮮やかな緋袴に、思わずほうと溜息をこぼした。

指でつまんで広げたり、鏡の前でくるりと回る。


「早抜けだな」


隣で着替えていた瑞祥さんがにやりと笑いながらそう言う。


「早抜け?」

「ああ。巫女装束の緋袴は二年からだし、神主志望の奴らなんて色つきの袴は三年からだぞ。一年で緋袴を履ける学生なんて滅多に居ないんだ」


確か高校一年の学年末テストを合格すれば直階四級になり巫女志望の生徒は緋袴が受給されるけれど、神主志望の生徒は直階四級だとまだ白袴だったはず。

三級でやっと浅葱色の袴になる。


なるほど、だから"早抜け"なんだ。