「あ、あのさ! やっぱり薫先生に頼ろうよ! だってあの鳥居も方賢さんの呪いの件も、薫先生は関わるなって言ったんだよね!?」
「なんだよ来光。さっきまでお前もノリノリで推理してたじゃん。今さら怖気付いたのかよ!」
「わ、悪い!? 僕はまた変なことに巻き込まれて罰則をくらいたくないの! しかも今回はあの嬉々先生相手で、下手したら呪いとか祟りとか受けるかもしれないんでしょ!? 命がいくつあっても足りないよっ」
来光くんの訴えはもっともだ。
薫先生が「関わるな」と言った。空亡の残穢《ざんえ》を説明してくれた時も、対峙した時は逃げろと言った。
押し付けてくる仕事も、私たちのレベルよりも高いものは絶対になかった。
適当な人のように見えて、私たちを危ないことから遠ざけようとしてくれた事実には変わりない。
それだけ危険が伴う可能性があるということだ。
「じゃあどうしろってんだよ! なんか案でもあるのか?」
「それは……ない、けど……」
目を伏せて口ごもる来光くん。
ひとつため息を吐いた嘉正くんが二本指を立てて私たちを見回した。
「二週間だ。タイムリミットは次の"結界が張り替えられる日"の夜まで」
「次ってことは、六月一日……開門祭の初日じゃん!」
「そう。開門祭の日は神職が出払っているから、結界張替えの神事は夜に行われるはずだよ。だから待ててその日の夜までだ。その時までに薫先生が何かアクションを起こさなければ、みんなであの鳥居へ行く。それでどう?」