来光くんの息を飲む声が聞こえた。

私はまだピンと来ず、「どういうこと……?」と聞き返す。


「変じゃない? だって、その祠は殺された生徒の為に作られたんだよね? じゃあ嬉々先生は殺した相手をわざわざ弔いに来たってことにならないかな……?」

「死者を祀る祠は、弔いの意味だけじゃないんだよ。例えば九州の大宰府天満宮」


大宰府天満宮と言えば、御祭りしているのは藤原道真公だ。

社史の授業で習った。


「あれは道真公の祟りを恐れた人達が、その魂を鎮め御祭りする為に建てた社だって習ったでしょ? つまり祟り────災いや呪い封じるための社」

「自分の呪いでさらに強い祟りが生じれば、呪いをかけた張本人は棚からぼたもちでしょ。嬉々先生がそんなのを放っておくはずがないよね」


もしそれが事実なのだとしたら、あまりにも酷すぎる。

何の罪もない生徒が呪いによって怨霊と化して、学校の奥の祠に封じ込められているなんて。

それも、そんなふうになってもまだ嬉々先生はその祟りを利用しようとしているだなんて。