「えっとじゃあ、次は方賢さんを狙って何をしたいのか……だよね」
「それは決まってるだろ! 自分の作った呪詞《じゅし》を試したいんだよ!」
「ジュシ?」
聞きなれない単語に聞き返す。
「呪《のろ》う詞《ことば》って書いて呪詞。祝詞の正反対の性質を持つ詞だよ」
祝詞《のりと》は祭祀において神様に大して唱え、厄祓いや病気平癒、安全や和合を祈る言葉だ。
その詞《ことば》自体が「言祝ぎ」の性質から出来ていて、それに私たち神職がプラスして言祝ぎの要素を強めて唱えることで、言霊となり効果が発揮される。
その正反対ということは、呪う詞────文字通り人を呪うための詞なのだろう。
「呪詞は嬉々先生の専門分野だよ。学生時代からずっと研究していて、これまでに作った呪詞が高等すぎて学術の範囲外で使用されると困るから神修の職員になったって聞いたことがあるよ」
つまり嬉々先生が自分の作った呪いで人を殺しかねない、と判断されたから神修の先生になったということ?
ハッと来光くんが目を丸くして息を飲んだ。
「だったら辻褄が合うよ! 嬉々先生は学生時代に、自分の作った呪いで他の生徒を殺した……だから、まねきの社の管轄下である神修の教員になった。そして今も自作の呪いを試そうと、弱い人間を狙ってるんだ!」