それにまだ不審な点はいくつも残っている。
薫先生が嬉々先生の「噂」について否定をしなかったこと、嬉々先生があのおかしな鳥居に居たこと。
もしそれらが今回の方賢さんを狙っていることと全て繋がりがあるとしたら、余計に訳が分からない。
私がそう言えば、慶賀くんは目を回して頭を抱えた。
「うわーっ、やめてくれよ巫寿! そんなにいちいち追求しなくても、とりあえず方賢さんを守ればいいじゃん!」
「でも、もし何か繋がりとか条件とか……嬉々先生が誰かを狙う"理由"があるんだとしたら……」
「今後ほかにも誰かが被害に遭うかもしれない、ということか」
嘉正くんのその一言に重く頷く。
事の重大さに気が付いたのか、慶賀くんは眉をひそめて真剣な顔をした。
「ひとつひとつ明らかにしていくしかないよ。みんなが疑問に思ってること、ひとつずつ出していこう」
手頃な枯れ枝を拾い上げた嘉正くんは、石ころの少ない土のところに①と書いた。
「まず何より"なんで方賢さんを狙うのか"だよね」
嘉正くんはガリガリと土の上にそう書いた。