一、二限が終わって10分間の休み時間に、真面目な顔をした慶賀くんが私たちの顔を見回した。
「なあ皆、次の授業って憑物呪法学で自習だろ? 抜け出さね?」
いつもの悪巧みに誘う声色ではなく、どこか真剣な声でそう言う。
誘ったその理由がわかった私達も、反対する人はいなかった。
自習と言っても監督役の先生は来るので、本鈴がなる少し前にドタバタと校舎を飛び出した。
学舎のある敷地から社頭へ続く石階段を降り、すぐに左へ曲がり本殿裏を通り抜ければ松の木に囲まれた庭園がある。
その庭園を流れる小川にかけられた石橋の下に潜り込んだ私たちは、揃って息を吐いた。
「サボったのバレたら怒られるかな。監督役の先生、誰だろ?」
来光くんが不安げにそう言う。
「禄輪《ろくりん》禰宜《ねぎ》か薫先生なら見逃してくれるんだけどなぁ」
「これ以上罰則が増えたら、三馬鹿のこと恨むからね」
「三馬鹿って、僕のこと頭数に入れないでよっ!」
みんなのそんなやり取りに思わず吹き出した。
「おっ、ここからなら文殿が見えるぞ! 方賢さんも見える!」
近くの松の木によじ登っていた泰紀くんが、丸めた紙を覗き込みながらそう言った。