「あははっ、ほんとキミ達学生は噂好きだねぇ。噂なんて殆どが適当な事実を繋ぎ合わせてできてるって言うのに」
伸びをした薫先生がサンダルをぺたぺた言わせながら歩き出す。
「じゃあ、嬉々先生が誰かを呪ったという事実はあるんですね?」
嘉正くんのその一言にピタリと足を止めた。
「何がしたいの?」
深いため息をついた薫先生が、呆れた顔で振り返って私たちを見下ろした。
「……嬉々先生が、方賢さんを呪ったかもしれないんです」
「ホウケン? 誰それ」
「まねきの社の権禰宜だよ! 文殿にいる!」
うーん、と首を捻った薫先生はそれでも思い出せないらしく誤魔化すようにあははと笑う。
「分かった分かった。じゃあそのホウケンさんとやらは俺が守ってあげよう。明階一級の俺だよ、文句ないでしょ。はい一件落着。キミたちはもう変に掻き回さないように、これにて解散!」
「あっ、ぜってぇ俺らのこと信じてねーだろ!」
「信じてる信じてる、俺センセーだから生徒のことはチョー信じてるよん」
それだけ言うと、薫先生はまた手をひらひらさせて階段を降りていってしまった。