「みんなおっはよ〜。今日も一日張り切って頑張って行きましょーってことで、「憑物呪法学」は嬉々先生が体調不良だから自習ね」
週明けの朝のホームルーム、いつもの調子で教室に入ってきた薫《くゆる》先生は教卓に立ってそう言った。
思わず隣の席の嘉正くんと顔を見合わせる。
慶賀くんがすかさず「はい!」と手を挙げた。
「どしたー、慶賀」
「嬉々先生が体調不良って、具体的にどんな症状なんですか!」
「あははっ、何でそんなこと知りたいの?」
「うへ!? いや、それは、その────ぶ、部活で! そう部活で薬調合して、持って行ってあげようかなって!」
慶賀くん……さすがにその言い訳は苦しすぎるよ。
ばか、と小さな声で呟いた嘉正くんは頭を抱えてため息をついた。
「俺も具体的には知らないけど、風邪って連絡だったかな〜? それにしても慶賀、嬉々とそんなに仲良かった?」
嬉々、と親しげに名前を呼んだ薫先生に目を見開く。
それに気がついていないのか、他のみんなは二人の会話を見守っている。
「ま、まあね。お世話になってるし!」
ダラダラと脂汗を流す慶賀くんに目を細めた薫先生。
直ぐに「まあいいけど」といつもの気の抜けた笑みを浮かべて、「じゃあ今日も一日、授業頑張ってね」と手をヒラヒラさせながら教室を出ていった。