「あ、巫寿ー! こっちこっち、お膳貰っといた!」
転がるように食堂の座敷へ入ると、私を見つけた慶賀くんがぶんぶんと手を振った。
慌てて駆け寄って、先程見た光景を伝えようとしたが息が続かず咳が出る。
「どうしたの、そんなに慌てて」
不思議そうに水の入ったコップを差し出してくれた嘉正くんにジェスチャーでお礼を伝えてそれを飲み干した。
「呪いが、呪殺って……!」
ざわめいていた食堂が一瞬で静まり返った。
ぎょっと目を見開いた皆は慌てて私の背中を押して座敷から出た。
靴を履いて外に出る。寮の向かって右隣にある大池の畔まで来ると、私の手を引いていた嘉正くんが足を止めた。
「巫寿どうしたの、物騒なワード突然言わないでよ!」
普段から落ち着いている嘉正くんからは見られないような焦った顔でそう言う。
「あのね巫寿ちゃん、今まではあんまり身近じゃなかったから不思議に思うかもしれないけど、この界隈じゃその言葉は……なかなか過激なワードに分類されるんだよ」
「過激なワード……?」
「うん。殺人とか拷問とかその類。それよりも酷いかも。だからあんまり大きい声で言わない方が良いよ」
なるほど、だから座敷が一瞬で凍りついたんだ。
まだいまいちピンとこないけれど、これからは控えようと心に決める。