「つまりそれがどういう事か、聡いお前ならばもう分かっているはずだが」 思わず身を乗り出して、胸に抱えていた本がするりと滑り落ちた。 目を見開いて手を伸ばす。床に着く寸前で背表紙を掴み、こめかみを冷たい汗が流れる。 強く口を押えて、息を殺した。 「逃げれると思うな。私の邪魔をする者は────呪い殺す」 嬉々先生は勢いよく手を離した。方賢さんは背中を強く扉にぶつけて、ずるずるとその場に座り込む。 その姿を一瞥すると、足早に去っていった。